本年度の研究では、球面上の領域での解析を進める第一歩として、「緯度」のみに依存する場合の非線形楕円型方程式を考察した.この場合は、線形化方程式が、「超球方程式」と呼ばれる特殊な形をした常微分方程式に帰着される.この線形化方程式の解と、元の常微分方程式に対する解の基本性質を考察し、国際研究集会の紀要"Recent Advances in Nonlinear Analysis"で公表した.さらに、この結果を踏まえて、球面上の領域を球面山体に広げるようにした場合の解の挙動については、不完全分岐現象が起こることが解明できた.この内容に関しては、平成19年10月に行われた京都大学数理解析研究所の研究集会「非線形発展方程式と現象数理」で発表し、その概要は数理解析研究所講究録に採録予定である.この結果については、平成19年度中の印刷公表には間に合わなかったが、現在投稿原稿作成中であり、今年度中には投稿する予定である.さらに、より一般化された多様体上での解析も現在推し進めている. また関連した話題として、ポテンシャル項のついた熱方程式の解の挙動についても研究し、解の微分の階数と時間減衰の関係を解明し、日本数学会の欧文誌(Journal of Mathematical Society of Japan)に投稿し平成19年度中に掲載された.この研究には、楕円型方程式の解の性質を十分に使用しており、放物型方程式を対象としているが、当該研究課題と関連のある内容である.さらにこの研究を発展させて、熱方程式の解の最大値(「ホットスポット」という)の挙動についても解明し、ポテンシャルの無限遠方での減衰状況と、ホットスポットの挙動の関係を明らかにした.この結果は平成19年度中に、微分方程式の分野では権威のある学術雑誌であるJournal of Differential Equationsに掲載予定となった.
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