研究概要 |
離散的函数方程式を複素平面上で考察しました。昨年度に引き続き、合成を含んだ離散的函数方程式の解の存在定理についての研究を進めました。特に、複素力学系に関わりの深い合成型の函数方程式f(G(z))=R(f(z))を対象に調べました。ここで,G(z),R(z)は多項式です。この函数方程式には超越整函数解は存在しないことが知られています。そこで、課題となるのは多項式解の構成と局所解の存在証明です。前者については、具体的に構成し複素力学系における超越函数解についてのBergweiler and Hinkkanenの定理が成り立つかどうかを可視化することを試みました。可視化によって、多項式の場合には、より精密な結果が得られることを予想しこれを解決しました。後者につきましては、G(z)の固定点の近くでの局所的な解の存在を示し、どこまで解析接続できるかを試みましたが、今後の課題として残りました。 値分布論の応用として微分方程式を考察する方法は昔から知られています。この場合は、除外区間は問題にならない場合もあります。一方で、離散的函数方程式の場合は除外区間を無視することはできず、どの程度取り除くことができるかは重要な問題です。この研究では、離散的函数方程式の定義方程式に増大の位数の小さい整函数を含む場合を考察しました。準備として、整函数の合成函数についての評価式の精密化に取り組み、ある増大の条件を満たす整函数については除外区間を取り去ることに成功しました。応用として超越函数を定義方程式に持つ、Schroeder函数の増大度を考察しました。
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