研究概要 |
Saariのホモグラフィック予想「ポテンシャルをVとし,慣性モーメントをIとした時に,VとIから作られる無次元量V\sqrt{I}が一定な運動は,ホモグラフィックな運動である」を証明するために,筆者は共同研究者(Diacu, Perez-Chavela, Santoprete)とともに平面上の多体運動を回転運動,サイズが変わる運動,形が変わる運動に分解することに成功しました.これを使って筆者らは,平面上の三体運動のかなり幅広い運動についてSaariの予想が成立することを示しました.この結果は,Transactions of the american mathematical societyに掲載されました. 昨年度に報告した三体8の字解の時間による高次展開については,その後の進展はありませんでした.しかし,その計算で得た貴重な経験を生かして,「4次の多項式では,斉次ポテンシャルの下での三体8の字解を表し得ない」ということを代数的に証明することができました.この結果については,国際会議では発表しましたが,いまだ論文にはまとめていません,近々まとめる計画です. 一方で,三体8の字解の研究を通じて,私と共同研究者(福田,尾崎)は,8の字解を含む三体の運動一般についての非常に興味深い性質を見つけました.それは,こういうことです.いまからちょうど400年前の1609年にケプラーはAstronomia Novaを出版しました.その中で彼は,惑星の軌道は楕円であり,その楕円の上を角運動量が一定となるように惑星が運動しているということを示しました。つまり,軌道の形と角運動量を与えると,運動が一意的に定まるということです.運動が直線の場合は,エネルギー一定を仮定すれば,やはり運動は定まります.我々が見いだしたことは,いくつかの場合に,それと同じことを三体の運動でも実行できることです.つまり,三体が運動する曲線と角運動量あるいはエネルギーが一定であることを仮定すると運動が一意的に定まるというわけです. このことは,ケプラー以後400年経った今,我々が初めて見いだしたことです.現在,その結果を公表するべく論文を執筆中です。
|