研究概要 |
可積分系の研究は,大別すれば「古典可積分系」,「量子可積分系」の2つに分類できる。量子可積分系は,対応する古典系を正準量子化したものであるので,両者はこの意味では初めから関係付けられている。しかし,両者にはそれ以上の結びつきがあることを,これまでの研究は示唆している。そのような関係のうち,本年度は,離散可積分系とYang-Baxter写像との関係を中心に研究を行った(Jonathan J.C.Nimmo氏(Glasgow大),Ralph Willox氏(東京大)との共同研究)。昨年度までに,A型,B型のKP階層からYang-Baxter写像を構成する方法が得られており,そうして得られるものと表現論的アプローチから得られるもの(組合せR)との間の関係を探ったが,残念ながらB型については現時点まででは満足すべき結果が得られていない。他の型(C型,D型)の離散KP階層から得られるものも含めて,組合せRとの関係を理解することは今後に向けての重要な課題として残っている。 また,離散可積分系に関連して,平面多角形に対応するmax-plus型写像,有理写像についても研究を行った(難波寛氏(立教大学大学院生)との共同研究)。現時点では,いくつかの具体例を構成する手法を与えたという段階であるが,そこで得られる具体例は他の分野(cluster代数等)と関係を持つ。また,この研究は,整数論的にも関心を持たれているSomos数列とも関連し,その方向への発展も期待できるため,今後も研究を継続する予定である。
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