研究概要 |
本研究は,北海道大学苫小牧11m電波望遠鏡や国内外の他の電波望遠鏡を用いて,銀河系内の広い範囲に渡って星形成領域における高密度分子ガスの分布とその物理状態を観測的に明らかにし,さらに近傍の渦巻銀河と比較することによって銀河スケールの動力学が星形成に及ぼす影響を調べるものである.最終年度は,観測は苫小牧望遠鏡を用いたオリオン座A分子雲を中心に進め,前年度までに取得されているW43領域及び,比較対象の系外銀河の観測結果の解釈を行った.オリオン座分子雲では,アンモニア分子の回転温度(励起温度)とオルソーパラ比から推定した過去の星間塵の温度,さらに遠赤外線のアーカイブデータから導出した現在の星間塵の温度を比較することにより,高密度分子ガスの温度が星形成の結果加熱されていることを明らかにした.また,W43領域についてはより低密度の分子ガスのアーカイブデータとの比較から,星形成効率が分子雲全体に対する高密度分子ガスの割合と相関することを明らかにした.さらに,NGC 3627を含む近傍の棒渦巻銀河について,棒状部の分子ガスが激しい運動のために渦状腕等よりも希薄であることを示した.これらの結果は学会で発表し,一部は学位論文としてまとめられ,且つ現在投稿中,一部は現在投稿論文として執筆中である.
|