研究概要 |
本研究の目的は、活動銀河核(AGN)に存在すると期待される連星ブラックホールを探査することである。AGNの大質量ブラックホールが中小質量ブラックホールの合体によって形成されたという仮説が正しければ、合体の最終過程に連星ブラックホールとなるはずである。その検証には、ジェットの噴き出す方向が歳差や軌道運動の光行差でうねる現象を観測すればよい。この目的で、双極ジェットを持つAGNを3天体、VERA(天文広域精測望遠鏡)を用いてモニター観測中である。これらについては電波像が得られているものの、1年に満たない観測期間内では連星ブラックホールに関する示唆は得られていない。2年に渡る継続観測で、軌道運動と歳差のどちらに起因するかを判別する。 これらに加えて、観測済みの2天体の解析を行なった。クェーサー3C 380のうねりが軌道運動によるものと仮定すると、軌道長半径9.2パーセク,質量86億太陽質量,周期8万年の連星ブラックホールで説明できる。この結果は、日本天文学会2007秋季年会,国際研究集会(VSOP-2シンポジウム)で発表し、現在投稿準備中である。 また、電波銀河NGC 1052においてはジェットのうねりが0.6年周期の歳差運動によるものとわかった。トルク源が連星ブラックホールの伴星とすると、質量が1億2千万太陽質量,軌道長半径が0.23パーセクと求まった。この結果も投稿準備中である。 これらの結果は、ジェットの運動解析で連星ブラックホールのタイプと軌道パラメーターを決められることを示した。VERAで観測中の3天体で軌道パラメーターの精密化を図る見通しである。
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