平成20年度の研究としては、引き続き主に銀河Arp 220でのアンモニアの吸収スペクトルの線幅の測定法を確立させることを目指した。 1. 前年度に判明した予期しなかったこととして、(観測装置の一部である)電波をスペクトルに分解するためのデジタル型の分光計において、スペクトルの強度が場合によっては問題があることがわかった。これについては、ハードウエア的な原因が根本にあるが、その原因は十分には明らかになっていない。そこで、ハードウエアから出力されたデータを用いて、強度の計算を行うソフトウエアを改修することで対応することとした。この改修は、研究代表者が責任者となっている観測所の計算機グループで行い、問題はほぼ解決した。これまでに取得したデータに関しては、補正を行う必要があると考えられるが、上記改修の過程でその方法はほぼ確立し、適用を行う予定である。 2. 線幅の吟味や、他の銀河の観測的な研究については、上記の事情などにより、今後に持ち越されている。今後早急にArp 220の結果を優先的に取りまとめ、今年度内に論文投稿を目指す。 以上、スペクトルの線幅の測定法の確立に時間がかかっているが、終盤に近付いており、本研究の基礎ができてきた状況である。 また、参考事項として、本研究の元となっているArp 220でのアンモニア吸収線の検出を契機として、Arp 220での他のスペクトル線についても検出を狙う試みを行った。しかしながら、検出には至らず、アンモニアの吸収線が比較的検出しやすく重要なスペクトル線であるという認識を強めている。
|