本研究では、大規模爆発現象を起こす源泉となる太陽表面の大規模磁場構造の観測を行うことを目的として、広視野3次元ベクトルマグネトグラフを開発する。本研究の範囲では試作レベルをめざしているため小型のものを予定しているが、それでも磁場の作る偏光を0.0l%オーダーでとらえるきわめて高い感度を持ちながら、広い視野(15'程度、ほぼ太陽半径)と10分程度の時間分解能を両立する、世界に例を見ない装置である。 本年度は以下のような成果を得た。 (1)国立天文台の太陽フレア望遠鏡にて太陽全面のfull-Stokes偏光測定を試験的に行い、光球・彩層それぞれの吸収線で十分な精度を達成することが実証できた。太陽フレア望遠鏡は通常他の目的で使用するため、本研究では別の光学系でのマグネトグラフ立ち上げを予定しているが、この実験で広視野3次元マグネトグラフというコンセプトの実現性を確認することができた。 (2)京都大学飛騨天文台のドームレス望遠鏡の偏光観測において、望遠鏡そのものによって生ずる器械偏光の測定とその補正の方法を確立した。本研究でも器械偏光の補正が必要となるためその基礎技術が必要となるが、この実験により手法を確立することができた。 (3)実際に本研究で使用するための物品の購入ならびに、新規製作が必要となる装置について設計と製作を行った。なお、(1)(2)については学会等で発表済み・発表予定であり、また論文としての出版も予定している。
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