研究課題
本年度はすばる望遠鏡などの大型観測装置で遠方銀河の近赤外線分光観測を行った。すばる望遠鏡による観測プロポーザルはH19年に5夜(装置不良で観測不可能)、H20年に3夜の採択が近赤外分光撮像装置(MOIRCS)であったが、現在の段階ではまだ解析結果が出ていない。また、当初予定していた、すばる望遠鏡のレーザーガイド補償光学装置(AO)も光ファイバー分光装置(FMOS)もまだ開発途中であり、実際の観測には使用できない状況にある。このような状況を考慮して、本年度はVLT望遠鏡での遠方銀河の三次元分光観測(SINFONI)を欧州の共同研究者と行い、z〜2にある銀河の電離ガスの運動を調べた。その結果、電離ガスの速度と速度分散のマッピングから、遠方の巨大銀河(これらはこれまでの科学研究補助費による研究ですばる望遠鏡を使って発見したものである)がマージングしたか否かを判定する基準を確立した。この基準を適用すると、観測した11個のBzK銀河の内、50%は巨大な回転円盤からなる銀河であり、残りの50%ではマージングの痕跡が認められることが明らかになった。これらの銀河は比較的短いタイムスケールで形成されていることを考慮すると、この結果から、遠方の巨大なBzK銀河の形成にはガスのスムーズな降着が大きな役割を果たしていることが分かる。半数の銀河で巨大な分厚いガス円盤が検出されているが、このような銀河は近傍宇宙では消失しており、楕円銀河になる過程でこのようなガス円盤を有する銀河進化の位相が存在することを強く示唆する。このガス円盤がこのあと、マージングで消失するのか、円盤の力学的不安定の発達によって消失するのかを明らかにするのが、今後の課題である。
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Astrophysical Journal (印刷中)
Astronomical Journal 135
ページ: 1482-1487
Astronomy and Astrophysics (印刷中)