研究課題
本研究の目的は宇宙で最大の質量を持つ銀河種族である、楕円銀河を遠方宇宙で直接検出してその誕生の様子を明らかにすることである。ハッブル宇宙望遠鏡による非常に深い撮像イメージから、このような楕円銀河候補の表面輝度分布を調べたところ、近傍の楕円銀河と星の総質量が同じであるにも関わらず、半径が2~5倍小さいという結果がこれまでの先行研究で得られ、銀河進化の研究での新たな謎となった。これをそのまま受け入れると、誕生期の楕円銀河の星密度は近傍の楕円銀河の10~100倍にも達する。また、星の速度分散は500km/sになるという研究もあり、このような大きな速度分散を有する銀河は近傍宇宙にはどこにも存在しない。コンパクトな銀河がどのようにして拡張して現在のような楕円銀河になるのか、その物理過程は明らかでない。本研究ではすばる望遠鏡に搭載した近赤外線分光器(MOIRCS)で1.5<z<2.5にある静的に進化しているBzK銀河(質量は10^<11>太陽質量、楕円銀河の祖先と考えられる)の近赤外スペクトルを撮り、星の速度分散、年齢、金属量を評価した(この観測のためにすばる望遠鏡を17夜使用した)。その結果、速度分散は300km/s程度であり、これは近傍の楕円銀河と同じくらいである。また、ハッブル宇宙望遠鏡による表面輝度の測定から、半径も近傍の楕円銀河と同程度であることを明らかにした。星の年齢は約10億年、金属量は太陽値に近い。これから、100億年前に既に近傍の楕円銀河と同じ銀河が存在したことは明らかである。本研究の成果は楕円銀河が既に100億年前に誕生していたことを強く示唆する。ただし、コンパクトな楕円銀河の存在も否定はできない。二種類の楕円銀河が共存したのか、それとも、コンパクトな楕円銀河の観測データ処理に誤りがあったのか。今後はこの二種類の楕円銀河の祖先が時代とともにどう変化してきたか、環境への依存性があるかを調べることが鍵となろう。
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