前年度までに大型計算機のオリジナルデータを小型計算機用に変換した南半球の観測データを用いて[CII]線強度の整約作業を行った。観測データには、[CII]成分をはるかに上回る大気バックグランドが含まれており、それを除去するためのアルゴリズムの開発から始め、その手続きの整合性、また、誤差の評価などを行った上で、[CII]成分の抽出を行った。残念ながら、データ中に含まれるノイズ成分の評価、除去に予想外の作業が発生して完成が遅れた。現在、得られた結果をつかって、南半球部分の[CII]線の強度分布図を作成中である。また、すでに解析済みの北半球データとの結合作業も合わせて進めているが、ある種の不整合性が見つかり、現在その究明を行っている。これらの作業が終わり次第、両半球データを綜合したデータベースとして、アーカイブ化したデータを公表する予定である。得られたデータは、[CII]線の銀河面強度分布図としては、世界的にも唯一のものであり、21cm電波線、CO線、熱的電波線、遠赤外連続成分などの分布図に匹敵するデータとして、星間物質相、銀河系構造研究に貴重な資料を提供するものである。今後、これらのデータとの比較研究を進める予定である。また、観測情報には、[CII]線の視線速度の情報を含んでおり、この情報の利用の可能性の検討している。これが可能になれば、銀河回転を利用して[CII]放射源の距離情報が得られ、[CII]線放射の銀河系内に於ける3次元構造に関する知見が得られる。残念ながら、作業は遅れ気味であるが、今後も継続して研究の発展を図る予定である。
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