カムランドでの2重ベータ崩壊探索では検出器の1000トン液体シンチレーター(以下「液シン」)の中心に薄い透明なバルーンを設置し、これにキセノンを最大限に溶かした液シンを収納する。キセノン溶解により液の重量が大幅に増加しバルーンの許容限度を超えるため新たな液シンを開発した。カムランド液シンの成分であるドデカンとプソイドクメンでは条件が満たされないことがわかったのでデカン+プソイドクメンを用いて混合比の最適化(81.8%/18.2%)を行なった。さらに発光剤のPPOを調整し、キセノンを溶解させ発光量、光透過率を測定した。キセノン溶解度は重量比で2.6%、発光量は目標である現在のカムランド液シンとほぼ同程度が得られた。なおキセノン溶解により発光量は減少することが確認された。これは前年度の結果と異なるが、液シンのバイアルと光電子増倍管(PMT)の光接触が原因と判明した。光透過率は分光光度計を使いPMTに必要な波長領域(400nm近辺)で測定誤差の範囲で変化はみられなかった。続いてキセノンのバルーン膜に対する透過率を測定した。カムランドバルーン膜(厚さ135μm)、ナイロン(25μm)、エバール(13μm)などの薄膜で仕切った容器に液シンを満たし一方の液シンにキセノンを溶かし、長時間放置してキセノンの拡散をガスクロマトグラフ(TCD検出器)で調べた。カムランドの膜は60日の保持でキセノンの透過は検出されなかった。他の膜についても検出されなかったが温度を上げて現在も継続中である。なおキセノン溶解による光透過率の経年変化については誤差の範囲で変化は見られなかったが、短波長側でさらに注意深く調べる必要があることがわかった。以上の研究により、目的とする液シンが最終的に決定された。経年変化についてはさらにテストを続ける必要がある。
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