宇宙線の伝播は移流拡散方程式(Fokker Planck eq.)で記述されるが、本研究ではこれに等価な確率微分方程式(SDE)を用いて、銀河宇宙線の太陽変調を研究した。本年度は太陽風速度の緯度依存性や太陽光球面における磁力線の差動回転を起因とする惑星間空間地場の乱れ(Fisk field)が銀河宇宙線太陽変調に及ぼす影響をSDEにFisk fieldを組み込んだシミュレーションコードを開発した。太陽風速度に緯度依存性がある場合、その勾配に応じて磁場強度が変化する。シミュレーション実験によりこれまで定性的に予想されていたFisk fieldが太陽変調に及ぼす影響を定量的に確認することができた。この成果は第30回宇宙線国際会議で発表した。またFisk fieldを入れた磁場モデルによって1997年のBESS実験によって観測された宇宙線陽子・反陽子のエネルギースペクトルをよく再現できることを確認した。この結果から、観測された宇宙反陽子は、銀河宇宙線と星間物質との核相互作用で2次的に生成される成分だけで説明され、ミニブラックホールの蒸発などのexotic成分はあっても極少量であることが略確実であることが判明した。また当初計画していた衝撃波などの不連続面が存在する場合のSDEシミュレーション実験に局所時間なる概念を取り入れる試みは進展をみなかった。 一方上述した研究の発展とした、スターバースト銀河NGC 253の電波ハローの研究について、銀河風および磁場構造モデルを改良した新しい考察を展開し論文にまとめた。
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