研究概要 |
惑星間空間磁場(IMF)としてParkerのモデルを採用したのではBESS実験による陽子と反陽子のエネルギースペクトルが再現できないことは確認されている。IMFの極性Aと粒子、の電荷の積qAに依存する銀河宇宙線太陽変調の22年周期についてもParkerモデルでは定性的には説明できるが定量性に欠ける。IMFのモデルとしてBurger等による修正Parkerモデルを採用して確率微分方程式を用いた太陽変調現象のシミュレーション実験を行った。このIMFモデルは、太陽風速度に緯度依存性を持たせると同時に、横向き磁場の揺らぎを起因とするIMFの擾乱が同時に存在する状況を近似的に表現する磁場を想定する。その結果、極性qAへの依存性はParkerモデルの場合と同様でドリフト運動が太陽変調現象を支配していること、太陽風速度の緯度勾配の符号が反転する緯度での磁場の反転を起因とする宇宙線強度の無視できない変動があること、またその変動の符号(Parkerモデルの結果との比較の意味で)が、極性qAの符号に依存することを発見した。これらの結果は第30回宇宙線国際会議のプロシーディングに論文として出版された。また太陽極域の差動回転に伴ってIMF,特に極域のそれがParkerモデルと大きくずれることがFiskによって指摘されている。(Fisk型のIMF)。Fisk型のIMFを想定すると、qA>0の極性の時期に極域からドリフトしてくる粒子の太陽変調の様子が大きく影響を受けると予想された。確率微分方程式を用いたシミュレーション実験によりこの効果を確認した。結果として、世界で初めてBESSによる陽子、反陽子の精密エネルギースペクトルの再現に成功した。結果は現在学術誌論文として投稿するべく準備中である。
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