研究概要 |
本研究は格子QCD第一原理計算を用いて核子間ポテンシャルを構成し、特に斥力芯の物理的起源を探る事を目的とする。平成19年度の研究では、核子間ポテンシャルを様々なクォーク質量(パイ中間子の質量に換算して379,529,731MeV)で計算し、軽いクォーク質量領域で近距離の斥力芯も中間距離の引力も成長することを明らかにした。核子間ポテンシャルのクォーク質量依存性は、格子QCD以外では信頼できる結果が得られないと考えられることから、データ提供の依頼が多い重要な研究対象であることに注意しておく。さらに我々の方法をハイペロン核子間ポテンシャル(アイソスピンI=1の核子-Ξ粒子間ポテンシャル)に拡張した。核子-Ξ粒子間相互作用は2008年度よりカ稼動するJ-PARCでDAY-1実験として注目されている重要な研究対象である。スピンに依存した強さの斥力芯と中間距離に引力を持ったポテンシャルが得られた。これら核子間ポテンシャルのクォーク質量依存性や核子-Ξ粒子間ポテンシャルの振る舞いは、岡・矢崎による構成クォーク模型の錨像(Pauli forbidden state+color magnetic interaction)と現在の所矛盾していない。しかしながら斥力芯の真の起源を明らかにするためにはさらに突っ込んだ研究が必要であると考えている。平成19年度にはまた、核子間ポテンシャルの計算を(有効)中心力からテンソルカヘ拡張することに成功した。最近の核構造理論においては、テンソルカの影響により魔法数等に変化が生じる可能性が指摘されており、熱い議論の対象になっている重要な研究対象てある。これらはいずれも多くの国際会議・研究会等で講演し、大きな反郷を得ている。いずれも現在論文準備中である。
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