格子QCDによる核力・ハイペロンカの研究を進めた。原子核物理の基礎となる核力を格子QCDにより導出する方法を確立し、これを応用して現在稼働中のJ-PARCにおけるハイペロンカの実験的決定を格子QCDの立場から援護することを目的とする。以下項目別に示す。(1)格子QCDで位相差の情報に忠実な核力を計算する我々の方法を解説し、クェンチQCDによる中心力、テンソルカの結果をまとめた論文を出版した。(2)核力のエネルギー依存性の研究:空間的反周期境界条件を使用することによって、重心系でE~45MeVのポテンシャルを生成し、E~0MeVの物と比較し、核力(^1S_0の中心力と^3S_1-^3D_1の中心力とテンソルカ)のエネルギー依存性が小さいことを示した。これが意味すること重要な事実で、核力をエネルギー依存性のないnon-localポテンシャルとして求める場合、non-localポテンシャルに微分展開を適用すると低次の寄与で打ち切れるということである。(3)LS力、中心力のL^2依存性、p-waveの核力等を調べる具体的な方法を完成させた。現在、それを利用した数値計算を実行中である。具体的結果を発表するまでにはもう少し時間がかかる。(4)結合チャンネルの相互作用:これまでの定式化ではelastic regionのポテンシャルしか計算できなかった。これをinelastic regionに拡張するためには、結合チャンネルの相互作用として定式化する必要があった。今回、Bethe-Salpeter波動関数の長距離の漸近形の議論を使って、結合チャンネルの相互作用を求める方法として拡張することに成功した。これを応用したΛΛ-ΝΞ-ΣΣの結合チャンネルの相互作用の計算が現在進行中である。これは、方法論自体は非常に一般的で、二体系に三体系が結合したNN-NNπのような場合にも適用可能であり、"ポテンシャル"を格子QCDの能力をenhanceする目的で使うという新しい視野が開ける。
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