本年度のもっとも重要な成果は、超対称性の破れとしてまったく新しいメカニズムを発見したことである。この理論は、vector-like gauge理論に基づいており、高エネルギー領域においてはconformal gauge理論になっている。このために、理論に含まれるパラメターは重いクォークの質量しかなく、予言能力の極めて高いものである。さらに、この新しい理論は、超対称性の破れが比較的低いエネルギースケールで起きることを予言する。また、この理論がvector-like gauge理論に基づいているために、非常に低いエネルギースケールでの超対称性の破れを我々のセクターに伝達することが可能になった。そのおかげでグラビチィーノの質量を16eV以下の抑えることができるようになった。これは本研究で考えているレプトジェネーシスと矛盾しない超対称性理論を考える上で極めて重要な発見である。というのは、通常、レプトジェネーシスのためには宇宙の温度が10^{9}GeV以上必要とされるが、このように温度が高いと、グラビチィーノが大量に作られる。するとグラビチィーノの質量が大きすぎるとそのエネルギー密度が観測値を大幅に超えてしまう。もしグラビチィーノの質量が16eV以下であれば宇宙論的に何の問題もないことが知られているからである。またさらに、本研究では上記の考えをLHC実験で検証する方法を提案した。
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