前年度に引き続き、ロボットアーム方式による3次元キャリブレーションシステムの開発を進めた。位置決定精度を悪化させている原因を、それぞれの座標での成分に分解し原因を特定した。設定位置と実際の位置の系統的なずれをパラメータ化してプログラムに組み込み、更に、機械構造の設計を改善することで精度をさらに良くできることが示された。 さらに、実際のニュートリノ振動実験に即して、必要とされる精度の要求がいくつになるかをシミュレーションを用いて評価した。KASKA測定器のシミュレーションを、高エネルギー物理学で標準的に用いられているGeant4パッケージを用いて構築した。液体シンチレータ標的、ガンマ線吸収層、バッファ層、アクリル容器、光電子増倍管などのジオメトリをプログラムしている。この中に標準ガンマ線源を置いた場合のエネルギー測定精度を、液体シンチレータからの光子レベルまでシミュレーションし、評価をした。その結果、線源の位置精度は10cm以下であれば、エネルギー較正の系統誤差によるニュートリノ事象選択効率は0.2%以下に抑えることができ、これは他の要因による系統誤差0.5%に比べて無視できるほど小さいので、十分な較正システムとして機能することがわかった。さらに、この誤差が測定しようとする物理パラメータθ13(唯一未測定のニュートリノ振動角)の感度にどれくらい影響するかも計算した。 以上の結果は東京工業大学の修士学位論文としてまとめられ、また、日本物理学会の年会でも発表された。
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