研究概要 |
コンパクトX線天体および活動銀河中心核に存在すると考えられている「ブラックホール」を検証することを目的とし,ブラックホール周辺で生じる天体物理現象について理論的な研究を進めている。ブラックホール周辺では膨大なエネルギー放出を伴う天体現象が予想されるが,これはブラックホールにプラズマガスが落下し,重力エネルギーを解放することに起因している。ブラックホールの検証のためには,このエネルギーがどの様な機構でどの様に,観測可能な輻射に転換するかについて理解を深めなければならない。 観測から示唆されている輻射スペクトルや時間変動,また宇宙ジェット現象を説明するためには,ブラックホール周りのガスの分布や運動,および磁場の分布などの理解が不可欠になる。本研究では一般相対論的な磁気流体力学を用いて,磁気圏としての活動性を研究している。現在までに,磁気流体プラズマ降着流解(定常解)や定在衝撃波を含む解について理解を深めてきたが,本年度は,この衝撃波面で解放されるプラズマの運動エネルギーが輻射のエネルギーに効率良く転換できたと仮定して,それがどのように観測されうるかのモデル作りを試みた。この作業は,モンタナ州立大学の共同研究グループと共同で進めており,現在スペクトル計算のためのプログラムを作成中である。また,ブラックホール周りの衝撃波面の像が次世代の天体電波観測衛星(VSOP2)で観測されるならば,重力レンズ効果などの一般相対論効果や磁気圏中のガスによる吸収の影響等を調べた。この成果は現在PRDに投稿中である。
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