強重力の極限的環境を生み出す「ブラックホール」について、その存在証明(あるいは実は存在しない?)を試みている。天体観測的には、コンパクトX線天体や銀河中心核において、その候補としての存在が指摘されてはいる。しかしながら、そこに膨大な質量の集中が存在することを示したに過ぎず、ブラックホールとしての時空構造の解明に迫るものではない。とはいえ、近年の天体X線観測衛星や電波望遠鏡の進歩は、めざましいものがあり、ブラックホールの存在証拠を直接的に観測できる段階に近づきつつある。国際的関心も高まっている。この現状を踏まえ、「ブラックホール磁気圏勉強会」研究会と天文学会企画セッション「BH時空」を企画した。 本研究においては、この流れを踏まえた理論研究として、ブラックホールの強重力場(曲がった時空)が、周囲にどのような環境を構築し、如何にして観測される激しい天体現象を発現するか、について研究している。ブラックホール近傍で発生するエネルギーの源は、そこに落下するガスが解放する重力エネルギーが主であるが、本年度は磁化したガスの落下(磁気流体降着流)について、その落下の条件、衝撃波形成の条件等について詳細に調べた。また、モンタナ大学の共同研究者と協力して、衝撃波からの輻射機構についての研究を進めた(基本構想の確認および数値計算のコード開発)。
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