研究概要 |
溝口俊弥氏(KEK)と共同で、DS形式に基づいて低次元(4,6次元)の超弦理論を量子化し、これが低次元のPS形式と同じスペクトルを与えることを示した。これはPS形式においては物理的スペクトルの不一致という全く新しい形で臨界次元が現れるということを意味している。また、同様にDS形式に基づく超弦理論において、ローレンツ対称性を詳細に解析した。DS形式はPS形式と比べて余分な場を含んでおり、全ヒルベルト空間はPS形式のものと比べて大きくなっている。特にPS形式とは異なり、DS形式の全ヒルベルト空間上ではローレンツ対称性は一部非線形に表現されており、完全にアノマリーが消えているのかは確かめるべき非自明な問題である。私はやはり溝口氏と共同で、この問題を考察し、半光円錐ゲージで量子化した場合、10次元時空以外ではローレンツアノマリーが存在することを具体的な計算で示した。この意味で、DS形式には通常と同じ意味でも臨界次元が存在することになる。但し、このローレンツ対称性の破れは非物理的な自由度を含む部分空間のみに限られており、先に述べたように、適当な相似変換を施すと物理的な自由度の空間は共変なPS形式のそれと同じになることを示すことができる。この時、アノマリーを持つローレンツ変換の生成子とアノマリーのない生成子との関係は以前として明らかではなく、これを明らかにすることが今後の課題である。
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