RNS形式に基づく超弦理論、超弦の場の理論について、近年の発展を踏まえてもう一度詳細に解析し直した。ウィッテンによるCubic型の超弦の場の理論は描像変換演算子の衝突から来る接触型の発散のためうまく定義することができない。この困難を回避するために考案された修正Cubic型の理論は、NS場を通常の-1-描像ではなく0-描像に取るところに特徴がある。私は大学院生の村田仁樹氏、高力麻衣子氏と共に、改めてこの0-描像におけるNS弦理論の量子化を詳細に解析し、これまで間接的にしか示されていなかった物理的スペクトルの同等性を具体的なヒルベルト空間の解析から直接証明することに成功した。その後この証明を相似変換を用いる、よりエレガントなものに修正した。その際、副産物として新しい逆描像変換演算子を発見した。この新しい演算子は、残念ながらローレンツ共変ではないが、衝突しても発散を産まない性質の良いものとなっており、新しい超弦の場の理論の構築に対して非常に示唆的なものとなっている。 また、修正型Cubic理論のゲージ固定についても解析を行った。これまでは修正型Cubic理論に関する量子化を議論する際、そのゲージ固定についてはきちんとした考察がなされていなかった。そこで私は上記二名の大学院生、及び九後汰一郎氏と共同で、ゲージ固定の問題を正統的なBV形式に基いて解析し、正しくゲージ固定することに成功した。その際、ゲージ固定は場と反場の分離が明らかなものと摂動計算に便利なものというそれぞれ異なる利点を持つ二つの条件に基づいて行い、後者の場合に物理的な伝搬関数が正しくビラソロ演算子の零点にのみ極を持つことを示した。
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