高次元ブラックホール時空に関連する研究として、湾曲した余剰次元をもつブレーンワールドモデルにおけるブレーンに局在したブラックホール解に関する研究を進めた。AdS/CFT対応をブレーンワールドモデルに適用することで漸近平坦なブレーンに局在した静的ブラックホールは存在しないことが予想されている。しかし、漸近AdSの場合には静的ブラックホール解が存在しないという理由が成り立たない。むしろ、AdS/CFT対応からは、十分に大きなサイズのブラックホールは静的に存在することが可能であることを示唆している。そこで、そのような漸近AdSのブラックホールを調べることでブレーンブラックホールの性質を明らかにし、AdS/CFT対応を適用することの可否を判定することを考えた。具体的には、拘束条件を解いて得られるブラックホール時空の初期データと、CFT側の近似として輻射流体近似による計算を用いて得られたブラックホール解を調べ、対応関係がうまく成り立っていること確認するとともに、可能なブラックホール解の系列を明らかにした。新しいブラックホール解の系列は、ブレーンに接触せずに高次元バルク時空に浮かんだものから始まり、ある臨界サイズになるとブレーンに接触するというものであることがわかった。 この他にも、将来の重力波検出実験を見据えて、重力波観測から重力理論の修正に対する制限がどこまで強く得られるのかについて研究をすすめた。コンパクト連星からの重力波は波形の予測が可能で、重力理論が異なっている場合にはその違いを波形の違いから検知することが可能である。この際に、連星の軌道パラメータとして離心率を考慮することや、スピンによる際差運動の影響を考慮することで修正重力理論への制限がどのように影響を受けるかを明らかにした。
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