19年度は京大原子炉は現在燃料変更に伴う許認可作業中で休止状態にあり、実際の研究開始にはこの許認可作業終了を待つ必要がある。年度当初での許認可作業は今年度〜来年度の半ばに完了の予定と表明されていたことから、本年度は計測系の整備、Cd-111(←In-111)による予備実験、および情報収集を中心に行った。 検出系の整備として磁気シールドの追加改造を計画していたため、検出器の強磁場下での特性試験を行ったところ、現在装備中の磁気シールドでも一定量以上のプローブ核注入ができれば磁場の影響を受けにくい距離での測定も可能である事が判明した。 原子炉稼働時に原子炉の中性子を照射してNEOMAXの減磁試験を行っていたため、減磁試験で使用したサンプルを使ってCd-111(←In-111)による摂動角相関を行った。減磁の発生しているサンプルでは摂動角相関のパターンの変化が見られる事が確認でき、今回の手法の減磁機構解明への有効性を確認した。この結果を超微細相互作用に関する国際会議(HFI 2007)に参加して発表し、あわせて核物性的手法による磁性体の電子構造研究に関する情報収集を行った。 より効率よい測定データの処理のためのデータ処理系の改良も進めた。従来の摂動角相関用データ収集システムでは計数時にエネルギー分別などを行うため、測定中にゲインシフトなどが発生した場合データ自体が損なわれていた。そこで既存のVMEモジュールを活用し多次元同時計数システムを開発した。これにより不可能であった摂動角相関のオフラインデータ処理が可能となり、実験中の検出器ゲインシフトなどに左右されない安定した測定が出来るようになった。並行して科研費で購入したMCAモジュールによる計数システムも構築し、原子炉再稼働時に様々な条件での測定を同時に行えるよう準備をした。
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