素粒子実験における重要な検出器の能力の一つに粒子識別能力がある。これを向上させることは実験の精度を上げることになり、そのためより効率の良い粒子識別が望まれる。近年、半導体ナノ粒子を高濃度で分散させたガラスが産業技術総合研究所により開発され、このナノ粒子分散ガラスの特徴(発光量の多さ、発光波長の短さ、劣化しにくさ)を活かしたシンチレータの可能性を探ることが本研究の課題である。 今年度の研究は昨年度中に入手したナノ粒子分散ガラスを調べ、シンチレータとして使用に耐えうるかどうかを吟味した。試料はナノ粒子の粒径2.7nmを2.8x10^<-5>mol/L(試料A)、または粒径3.8nmを1.2x10^<-5>mol/L(試料B)混ぜた2種類と、比較用として通常のガラスの計3種類の試料を作成した。まず、試料Aは紫外線を吸収して約570nmの発光をし、一方試料Bは約670nmの発光を主にする。実験によると、光量は多いものの、この発光の波長は光検出器である光電子増倍管の感度がある領域(約450nm)から少しばかり外れており、最も望ましい領域の発光ではないことが分かった。また、シンチレータとして使用する場合には、ある程度の透明度がシンチレータに要求されるものの、ナノ粒子分散ガラスにおいてはその高濃度ゆえに試料自体の透明度が悪く、大きなシンチレータには向いていないことが分かった。形状においては分厚いガラスを作ることは難しいので、今後は薄いガラスを検討するなどの可能性を追求していく計画である。
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