(1) 160核の4α直交条件模型による研究。 実験的には基底状態を含めて6つの0+状態が知られているが、4α直交条件模型計算はこのすべての状態のエネルギーと崩壊幅とMonopole遷移強度の実験値をほぼ再現した。計算結果の波動関数を分析すると、第6の0+状態(15MeV近傍)が4αのボーズ凝縮状態であることが分かった。この計算は、基底状態が2重閉核構造で、第2の0+状態が12C(0+)+α構造で、第3の0+状態が12C(2+)+α構造である、というこれまでよく知られた知見を再現しているので、計算の信頼性は高い。今回の新たな発見は、第6の0+状態が4αボーズ凝縮状態であるということの他に、第4の0+状態が12C(0+)+α構造でクラスター間相対運動が高いNodeを有したものであることと、第5の0+状態が12C(1-)+α構造であることを見出したことである。今後は計算の詰めと、実験的に計算結果を実証するするための研究を行う。現在、これまでの成果を2つの論文にまとめている。 (2) 内部座標による密度行列。 有限原子核でのα粒子のボーズ凝縮の度合を調べる有力な方法は、重心座標を除いた内部座標を使って得られた波動関数の密度行列を計算し、その固有値の分布を調べることである。この内部座標としてはJacobi座標系を採用して来たが、これ以外の座標系を採用すると固有値分布がJacobi座標系(とその関連座標系)を用いた結果と著しく異なる場合があることを見出した。その原因の解明に成功し、さらにJacobi座標系(とその関連座標系)を用いることの重要性を明らかにした。現在、この成果も論文に纏めている。 (3) Monopole励起によるクラスター状態の励起の研究。 一般に軽い核のクラスター状態を基底状態からMonopole励起する強度は、1核子強度ほどの大きさがある。その理由はBaymann-Bohr定理に示されている殻模型波動関数とクラスター模型波動関数の同等性と、基底状態の有するクラスター相関に起因することを明確にした。この成果はMonopole励起がクラスター状態研究の重要な実験的手段であることを示している。現在、論文が纏まり投稿段階。 (4) 160の(α、α')実験による研究。 160の第4の0+状態の波動関数を分析して、160の(α、α')実験による研究に協力した。論文が既に掲載公表された。
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