(1) α粒子のボーズ凝縮状態の研究には内部自由度だけで定義される1粒子密度行列の分析が不可欠である。今年度の始めにこの研究のまとめの論文の発表も行った。 (2) 今年度は「α粒子のボーズ凝縮状態の概念」について、8Be、12C、160の3つの原子核に対するこれまでの研究成果の上に立って重要点を整理して議論する仕事を行い、それを論文として発表した。 (3) 160における4αのボーズ凝縮状態の同定の研究は最初は完全に微視的な波動関数(THSR関数)を用いて行われ、4αのボーズ凝縮状態は第3番目の0+状態であると考えられた。しかし半微視的な4α直交条件模型研究の結果との比較を行った結果は第3番目の0+状態が必ずしもボーズ凝縮状態として適切な性格を持っていないことを示した。そこで、共鳴状態としての記述を正しく行う形で、第4番目の0+状態を研究した。ここでの共鳴状態の取り扱いの方法は「拡張されたACCC法」として私達が開発したもので、すでに12Cに於いてその有効性が十分に実証されているものである。その研究の結果、この第4番目の0+状態の方が4αボーズ凝縮状態の性格を顕著に有することが分かった。つまり、完全に微視的な波動関数(THSR関数)を用いた研究は半微視的な4α直交条件模型研究の結果と調和した形で4αのボーズ凝縮状態の存在を示した。この研究をまとめて論文を作成した。 (4) 160における4αのボーズ凝縮状態の同定の研究には基底状態からの電気単極遷移の研究が重要である。実際に現状では、4αのボーズ凝縮状態についての実験的情報は非弾性励起160(α、α')、からの単極励起の情報が唯一とも言える。そこで今年度は、160(α、α')の励起関数の実験データの再現を目指す研究を行った。その結果、第三番目かtら第六番目までの0+状態がはっきりと励起されていて、その励起の強度は4α直交条件模型研究の結果と良く対応した。
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