研究概要 |
(1)軽いスカラー中間子 スカラー中間子8重項(σ,κ,f0,a0)はテトラクォークの候補として議論されてきた。我々はQCD和則を用いて、テトラクォークカレントによる2点関数の和則解析を行った。この際マルチクォークに特有な、カレントの複数自由度を解析し、物理状態に最もよく結合する最適化されたカレントを構成することに成功した。その結果、質量の実験値をほぼ再現することができた。 (2)ペンタクォークバリオンの光生成 エキゾチックバリオンの候補として、中性子標的から光によって生成されるN(1675)の生成反応を調べた。η中間子の生成に伴う可能な核子の共鳴を取り入れ、相対論的に共変な形で散乱振幅を書き下した。散乱断面積のエネルギー依存性、角度依存性、スピン偏極量を解析し、N(1675)の未知のスピンとパリチィーに関する理論的な考察を行った。 (3)カイラルユニタリ模型の繰り込み カイラル摂動論に基づいて、バリオンの共鳴状態を中間子とバリオンの分子状態として記述する試みがなされている。この計算には発散が表れるので、それを除去するために繰り込みを行う。このときの繰り込み定数の物理的な意味を考察し、分子状態と通常の励起状態を区別する議論をした。 (4)K中間子の光生成 この研究はストレンジネスの生成を伴う最も基本的な反応で、エキゾチックハドロンの研究の基盤をなす。QCDアノマリーによって引き起こされる量子補正の重要性を指摘し、従来のパラメータ物理に対して微視的理論からの基礎を与えた。これにより反応の研究から構造を探る研究の展望を開くことができた。
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