弦理論に基づいた超対称性のない素粒子模型の構成を念頭に入れつつ、主にNS-NSタドポールの問題の回避・解決について研究した。 超対称性の存在しない弦模型においては、NS-NSタドポールの存在は避けられず、その具体的な困難は物理量が発散することとなって現れる。NS-NSタドポールの存在は、物理的には、模型が真の真空にない(弦理論の解になっていない)ことを意味するが、真の真空に移行することは技術的にきわめて困難であることが知られている。偽真空にいたままで真の値を得る方法としてtadpole resummationがある。弦理論ではなくて場の理論においてすでに提唱されていたこの方法が、弦理論において具体的に可能であることをboundary state formalismを用いて示した。これによって、超対称性のない弦模型の物理量が有限な量として求まることとなる。この方法を論文にして発表した。 超対称性のない弦模型における素粒子の質量は量子補正を受ける。その量子補正の計算はたいへん複雑であるが、boundary state formalismを発展させて簡単に計算する方法を開発した。これは上記のtadpole resummationの方法がそのまま適用できるものである。これについての論文を現在執筆中である。
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