研究概要 |
4次元Kerrブラックホール解の“隠れた対称性"は,時空に共形キリング-矢野(CKY)テンソル場と呼ばれる特別なテンソル場が存在することから幾何学的な理解が得られる.本研究において我々は,高次元時空でCKYテンソル場の存在を許す時空は,Chen-Lu-Pope(2006年)によって発見された高次元Kerrブラックホール時空ただ1つであることを証明した.この結果は,4次元だけでなく高次元のKerrブラックホールにも隠れた対称性が存在することを意味する.実際,この対称性を使って測地線方程式,クライン-ゴールドン方程式,ディラック方程式等々,高次元ブラックホール時空上の場の方程式が変数分離することを示すことができる.さらに,分担者大田との最近の研究[arXiv:0901.4724]によって高次元ブラックホールを線形摂動した方程式も,ある種のモードに制限すると変数分離することが示され,解の安定性解析に対し大きな前進があった. 研究課題名後半にある佐々木-Einstcin多様体に関する成果は,宇宙項を持つ5次元Kerrブラックホール時空のBPS極限から佐々木-Einstein計量が誘導できるという橋本-阪口との共同研究(2004年)に対し,CKYテンソル場からの新しい視点が得られたことである.この結果を応用するとケーラー多様体上の球面束に新しいEinstein計量が構成できる.この解を使って超重力理論そして超弦理論のコンパクト化を議論する予定である.
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