ブラックホール(BH)は一般相対性理論の解であり、天文観測からも私たちの宇宙での存在は多数知られている。しかし、この解の理論的な性質を突き詰めて調べていくと、種々の不思議な性質が浮かび上がる。その代表的なものが、BH時空が熱力学的な性質をもつということである。ブラックホール時空での場の量子論を考えると、古典的には光すら脱出できない「黒い」存在であったBHは、量子的な効果を通して輻射することがわかる。またこのことと関係して、BHにはエントロピーが付与され、その背後にミクロな時空構造が存在することを示唆する。このようなBHの熱力学的な性質を調べることがこの研究の目的である。 この研究では、まずマクロな観点からBH時空の量子論的な性質を調べ、BH熱力学の普遍的な性質を明らかにすることを目的とした。また、超弦理論や行列模型といった重力の量子論を使って、BH熱力学の背後にある統計力学的な性質を解明していくことももう一つの目的としている。
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