本研究では、15cm×2cm×2cm程度のファイバー形状のエアロジェルを製作・加工し、それをチェレンコフ輻射体として用いることによって、粒子識別能力をもち、且つ飛跡検出可能な新しい検出器の開発をめざす。 Bファクトリー実験の経験から、KEKにおいて疎水性を持つ低屈折率1.010から1.030の透明なエアロジェルの製作が可能になった。更に最近の研究より高い屈折率1.030から1.060においても高透明度を保持するエアロジェルサンプルの製作技術が確立した。この手法を用いれば、透明度の高いある程度の大きさのエアロジェルサンプルを作れば、あとはウォータージェット装置による切断行程を繰り返すことで、ファイバー形状エアロジェルの大量生産も可能ではないかと思われる。このような技術的進展に加え、現在の素粒子・原子核実験においては、厳しい多重粒子環境の中で遂行されることが多くなっている。このような条件のもとで、大型実験装置では、検出性能を最大限に引き出すため、個々の測定器の物質量は極力制限された設計を要求されている。この様な背景から、エアロジェルをファイバー化して使用できれば、物質量を最小限に抑えつつ、エアロジェルから発生するチェレンコフ光を検出し、しきい値型カウンターとして用いることで、粒子識別可能であり、ファイバー形状から飛跡も特定できる全く新しい検出器を研究開発する。
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