私たちの研究目標は、電子とミュー粒子の異常磁気能率への電磁気的な現象からの寄与を、理論計算によって正確に求めることである。2007年度の目標として、光子からだけの寄与を計算するプログラムを自動生成するシステムを完成させることがあった。生成システムは2006年度末に一応の完成をみており、その検証を行わなければならない。まず、電子の異常磁気能率への摂動8次の寄与のうち、光子4個からだけなる寄与を求めるプログラムを生成し、数値計算を行った。この計算結果は、既知の8次の寄与とわずかにずれていた。各ファインマン図ごとの寄与を徹底的に比較検証すると、自動生成したプログラムには間違いがなく、前のプログラムにわずか2行ほどの間違いがあることが判明し、8次の寄与が変更されることとなった。 電子の異常磁気能率は2006年にハーバード大学から新しい測定結果が発表された。その実験値と、私たちの理論値を用いると、電磁気力の強さを示す基本物理定数である微細構造定数の値が正確に求められる。今回の理論値における8次の値の変更は、この微細構造定数の値に従来の誤差の範囲を大きく逸脱する変更をもたらすことになった。 これらの検証を経て、プログラムの自動生成システムの信頼性は揺るぎないものになったと言える。これは自動生成システムでしかなしえない摂動10次(光子5個)の計算の実現可能性を飛躍的に高めるものである。 さらに、フェルミオンのループ図で表される真空偏極の効果を計算するプログラムの自動生成システムも完成し、検証が終了した。現在、システムから生成したプログラムによる数値計算が進行中である。
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