研究概要 |
電子の異常磁気能率への量子電気力学からの寄与のうち、摂動の10次の項の計算を行った。今年度は、フェルミオンループを含む図形を集中的に取り扱い、その寄与を求めるプログラムを制作し、数値計算を実行した。その結果、光光散乱の図を2個内部的なループとして含むセットI(j)や、6次の真空偏極を含むセットI(g),(h),II(c),(d)などの寄与を求めることができた。これで10次に現れる32のゲージ不変なファインマン図のセットのうち、24セットの値が確定、3セットはプログラム制作が終了し、数値計算の実行と検証を残すのみ、5セットはプログラムの制作が進行中という状態になった。これで手つかずのまま放置されているセットはなくなり、12672個すべてのファイマン図の計算完遂のゴールがかすかではあるが見えて来たといえる。 今年度の研究で値を確定したフェルミオンループを含むファインマン図のセットに対する電子異常磁気能率の計算プログラムは、パラメタを変更するだけで、ただちにミューオン異常磁気能率の計算に転用ずることができる。私たちの得たミューオンの結果は、他グループによりほぼ同時期に得られた漸近展開を用いた解析的な値と良く一致している。これは、ミューオンと同時に電子での計算の信頼性をも保証するものである。 また、数値計算の非常に困難な光子だけの補正によるセットの計算を高速化するための数値計算方法の開発にも着手した。
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