研究概要 |
量子常誘電体として知られているSrTiO_3(STO)は、0〜40Kの広い温度範囲で、電気分極を揃える双極子・双極子相互作用と、それをバラバラにする量子揺らぎ(ゼロ点振動)が拮抗している臨界領域(量子常誘電状態)が実現されている系である考えている。問題は、臨界領域を特徴づける長さのスケール(LS)が存在するかどうかにある。本年度は、この問題に関連して次のような光散乱実験結果を得た。 1. STOの180°光散乱配置で、全散乱強度が24〜37Kの温度範囲で異常に強くなることを見いだした。この異常はLSが光の波長(100nm)程度になるための臨界蛋白光によるものであると考えられる。また、100nmという長さは、量子常誘電状態で特異的に現れる"ブロード・ダブレット"(BD)の平均自由行程とほぼ一致する。このことは、BDの平均自由行程を調べることにより、逆にLSの情報が得られる可能性を示唆している。 2. 自由電子をドープしたSTOにおいて、量子常誘電相だけで励起されている"プラズモン-Eu(x,y)LOフォノン結合モード"から求まる平均自由行程の温度依存性はBDのものと極めて類似していることから、量子常誘電状態は単一の長さのスケールで特徴づけられていると結論づけた。
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