研究課題/領域番号 |
19540326
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
折原 宏 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30177307)
|
研究分担者 |
羅 亮皓 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00421991)
|
キーワード | ソフトマター / 強誘電性液晶 / X線解析 / 電場-温度相図 / リエントラント相転移 / 離散的モデル |
研究概要 |
本研究の目的は、X線散乱測定等を用いて液晶性ソフトマターの構造とそれに及ぼす外場効果を調べることである。今年度は、昨年度に引き続き、リエントラント相転移(同じ相が温度を変えると二度現れる)を行なう強誘電性液晶の相転移挙動を調べた。測定に用いた試料は、高温側から相系列SmA-SmC*-SmCA*-SmCre*である。シンクロトロン放射光を用いて層間隔の電場、温度依存性を詳細に測定するとともに、偏光顕微鏡を用いて液晶分子の層法線からの傾き角の測定も行なった。これらのデータから液晶分子の長さを計算したところ、温度が下がると分子が長くなることがわかった。この液晶では温度が下がると反強誘電相が消失するので、分子の伸びが反強誘電的相互作用を抑え、強誘電的相互作用を増強することが分かった。具体的には、分子が伸びることによって、反強誘電的分子配向を好むステリックな相互作用が抑えられることによるものと考えられる。 さらに、反強誘電性液晶に対する電場効果を調べるために、短いラセンピッチを持つSmCα*相と呼ばれる相が現われるMHPOCBCにおいて誘電率測定を行なった。電場と温度を変えることにより、詳細な電場一温度相図が得られた。高電場下においてはSmCα*相が消失し、強誘電相が出現することが明確に示された。この相のダイナミクスを調べるために、DCバイアス電場下における非線形誘電率測定も行なった。その結果、SmCα*相において低周波モード(ソフトモード)が存在し、これがDC電場の増大とともに低周波側にシフトするのが観測された。 本研究により、キラルスメクチック液晶においてはその構造に及ぼす電場効果が大きく、構造を制御する上で電場は極めて有効であることが分かった。
|