本年度は、近赤外〜中赤外域の光源を用いたコヒーレントLOフォノン・プラズモン結合(LOPC)モードの光学応答の理論的解析、ならびに、中心波長が、850〜900nmのフェムト秒パルスレーザー(パルス幅約20fs)を用いた時間分解反射率測定におけるn型GaAs、n型InAs中のコヒーレントLOPCモードの光制御、及び、中赤外域(1.55μm帯)のフェムト秒レーザー光源を用いた強誘電性半導体のPbGeTe及び相変化記録膜材料(Ge2Sb2Te5)におけるコヒーレントソフトモードの観測と相転移ダイナミクス解明に関する研究を行った。 その結果、n-GaAsにおけるコヒーレントLOPCモードの近赤外〜中赤外域光源による応答について、時間依存シュレーディンガー方程式を用いた理論解析により信号の予測を行ったところ、丁度プラズモンの振動周期に一致した8パルスによる非共鳴型励起時でもLOPCモードの選択的励起が可能なことが分かった。この結果を踏まえて、n-GaAsにおけるコヒーレントLOPCモードの光パルスペアによる制御実験を行った。その為にマッハ・ツェンダー干渉計を自作し、時間分解反射率測定を行ったところ、理論解析結果と同様にL+モードの周期にほぼ同期した場合はLOフォノンの振動が抑制され非常に強いL+モードが観測された。また一方、中赤外域(1.5μm帯)のフェムト秒レーザー光源を用いた相転移材料の時間分解反射率測定では、残念ながら信号・雑音比の良い信号を検出するまでには至らなかったが、従来の近赤外域フェムト秒パルスレーザーを用いた実験では、DVD記録膜材料(Ge2Sb2Te5)におけるコヒーレント光学フォノンのアモルファス状態の減衰の速いコヒーレント振動を観測し、結晶状態ではその減衰時間が有意に延びるという興味深い結果が得られている。
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