研究課題
低温・強磁場中で整数量子ホール状態にある2次元電子系のスピン偏極状態は、ゼーマン分裂したランダウ準位の上下スピンの電子数差により決まる。実際には、2次元電子系のポテンシャルの乱れや電流によるホールポテンシャルなどの影響を受けて局所的なランダウ準位占有数(局所電子濃度)が空間的に異なるため試料内部でスピン偏極状態が空間的に分布を持つ。また、核スピン偏極による有効ゼーマンエネルギーや、スピン緩和を促すスカーミオン励起などの影響を受けて多様なパターンを示し、量子ホール効果の電気伝導に影響を与えている。本研究ではGaAs/AIGaAs量子井戸2次元電子系を対象に低温・強磁場の下で微弱励起光によるカー回転を用いて2次元電子系1層の電子スピン偏極について高感度に検出できる測定系を開発し、イメージングを行った。微弱カー信号の検出では、励起光にGaAsの吸収端近傍の波長を用いるとともに、試料ゲートによる電子濃度変調に同期したカー信号成分をロックイン検波した。試料に外部電流を流さない状態では、試料の電子濃度の空間分布に応じて局所スピン偏極が分布を持つ。温度4.2K、占有数ν=1における試料中のスピン偏極イメージングでは、試料内の0.1%以下の僅かな電子濃度ゆらぎが明瞭に可視化された。さらに、試料に電流を流すことでホール効果によるポテンシャル分布が生じこれにより生じた極めて僅かな電子分布の変化がスピン偏極度に反映しイメージングが可能であることを実証した。これは、電流分布の情報が電子スピン偏極度を通して可視化ができ、核スピン偏極による動的な電子スピン偏極度の変化や電流分布への影響の研究に、このスピンイメージングが有力な手法である事を示した。
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