ルチル型二酸化チタンの粉末を原料とし、塩化アンモニウムを輸送剤として、化学輸送法によるアナターゼ型二酸化チタン単結晶育成を行った。特にNbイオンドープでは、最大1%という高濃度のドープに成功した。光吸収スペクトルでは、高濃度のNbドープ単結晶で、バンドギャップ付近に新しい吸収帯を生じることが明らかとなった。また、ドープのない試料との吸収スペクトルにおける類似性も大きく、酸素欠陥も同時に存在する可能性が示唆される。Nbをドープした試料についての電気伝導の温度依存性を様々な濃度の単結晶について測定した。温度依存性については低温側で伝導度が低下したものの、4Kまでの測定では半導体試料に特徴的な伝導度の急激な低下は観測されなかった。また、電気伝導度はNbドープ量には比例していないことがわかった。さらに、バンドギャップ以上の紫外光照射を行ったが、その効果はほとんど観測されず、光誘起キャリアに比べドープしたNbにより導入されたキャリアが支配的であることがわかった。また、この方法とは異なる輸送剤を用いた単結晶育成に取り組んでいる。候補となる輸送剤として吸湿性が激しい四塩化テルルを用いている。化学輸送法によるアナターゼ型二酸化チタン単結晶育成では育成時の水分の制御が重要であるので、現在は育成条件の規格化を行っている段階である。次年度の実験に向け、電気伝導測定方法の改良やホール効果測定のための準備を進めている。
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