銀ナノ粒子を透明ポリマー(PVK)に分散した薄膜層と、異種透明ポリマー層(CA)を交互に堆積した1次元フォトニック結晶の3次非線形光学特性を評価した。作製したフォトニック結晶(PC)の反射スペクトルには、1次と2次のフォトニックバンドの間に形成されるフォトニックバンドギャップ(PBG)に対応した高反射率帯が観測された。高反射率帯は、銀ナノ粒子の表面プラズモン共鳴バンドと重複した波長域に現れるように構造を設計した。zスキャン法により、銀ナノ粒子に起因する非線形な透過係数を、PBG付近の種々の波長で評価した。また比較のため、銀ナノ粒子をPVKに分散した単層膜を作製し評価した。PCの透過率にみられる光学非線形性は、1次のフォトニックバンドの上端(短波長端)付近で増強されることを見出した。増強の大きさは、6.5周期の試料において約7倍であった。1次のフォトニックバンドの上端に対応する波長の光波は、PC中では高屈折率層に光電場の腹が集中するような定在波となる。銀ナノ粒子を含む高屈折率層に光の定在波の腹が合ったことにより、非線形な透過率変化が単層試料よりも大きく現れたものと考えられる。本研究では、定在波の効果を利用した非線形性の増大化を、実験的に初めて確認した。 次に、銀ナノ粒子をPVKに分散した薄膜層を1次元PCで両側から挟んだ構造を有する多層構造を作製した。このような構造では中央の層はPCの周期を乱す欠陥となり、巨大な振幅の光電場が局在し非線形性が増強されると考えられる。しかし、これを実現するには欠陥層の厚さとPC層の構造を精密に制御しなければならない。本研究では、このような構造を作製するための技術開発をおこない、作製に成功した。 本研究においては、金属とポリマーで構成される制御されたナノ構造体を安価かつ簡便に作製する方法を開発し、プラズモン共鳴とPCを組み合わせた系で光の局所増強効果の発現を実証した。
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