高圧力下の水の中で成長する氷結晶は、ラフニング温度(-160C)以上では円盤状の形をしている。c軸方向からは円状に見え、それと垂直方向からは2枚の平行な{0001}ファセットと、そのエッジ問を滑らかにつなぐ曲面(微斜面とラフ面)が見える。これをゆっくり成長・融解させると、ファセットはピン止めされた状態で、曲面のみが前進・後退する。その結果、成長形はファセットが一層広がった円盤状になるのに対して、融解形はファセットが縮んで丸くなる。成長形にはファセットが発達するのに対して、融解形では曲面が支配的になる。 2次元数理モデルを適用し理論解析を行うために、実験系として、基板面に沿って成長・融解する2次元氷結晶を観測した。その結果、成長形と融解形の間に3次元円盤結晶と同様の非対称性を見出した。すなわち、初期形として楕円形を与え成長させると、ファセットはピン止めされた状態で曲面のみが前進する。ファセットの端にある微斜面が消滅し、曲面中央のラフ面が支配的になる。このときファセットの端に曲率の不連続点(ショック)が形成され、微斜面がそこに吸収される。ラフ方位は平均曲率が減少しながら伸び、ファセットが大きく発達した形に向かう。これを融解させると、曲面が後退しながらファセットの端に微斜面が大きく張り出す。最終的にはファセットは消滅し、初期形の楕円に戻る。ラフ面の平均曲率は融解とともに増加する。以上のように、成長と融解では微斜面とラフ面の発達過程およびラフ面の曲率発展が逆になることがわかった。2次元界面律速モデルに基づくシミュレーションを行い、観測した成長形と融解形の間の非対称を説明することに成功した。
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