研究課題
量子ドット複合系における近藤効果、および半導体ナノ構造におけるスピン制御の理論研究を推進した。(I)Aharonov-Bohm(AB)リングに埋め込まれた量子ドットの示す近藤効果に対してスケーリング解析をおこなった。そのために、(1)ABリングと外部リードの電子状態にユニタリー変換を施し、量子ドットにトンネル結合するモードとそうでないモードに分離する、(2)前者のみを取り入れて「量子ドット+1つのリード」の等価な系に帰着させる、という計算手法を開発した。帰着したモデルにスケーリング法を適用することで、近藤温度、および電気伝導度の解析解が得られる。ABリングのサイズが小さい極限において、近藤温度はABリングを貫く磁束に著しく依存することを示した。この計算手法は、一般の量子ドット複合系に対して広く応用が可能である(J. Phys. Soc. Jpn.誌レターセクションに掲載)。現在この手法を用いて、ABリングのサイズ依存性について研究を進めている。すでにリングサイズと近藤クラウドの大小関係によって、物理量の磁束依存性が大きく変わる結果を得た(第64回日本物理学会年次大会にて発表)。(II)半導体ヘテロ構造でのアンチドット構造において、スピン軌道相互作用に起因する外因性スピンホール効果を研究した。外因性スピンホール効果とは、電子のポテンシャル散乱において、スピンの向きによって散乱方向が異なる現象である。2次元電子系に軸対称な散乱ポテンシャルがある場合のそれを、部分波展開の方法を用いて定式化した。次にアンチドットに正のゲート電圧をかけて作られる引力ポテンシャルの影響を調べた。ポテンシャルの高さを制御して共鳴散乱の条件を満たすとき、スピンホール効果が著しく増大し、数十%の大きなスピン注入を実現し得ることがわかった。
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Proc. 25th International Conference on Low Temperature Physics (Amsterdam, 2008) 掲載決定
Journal of the Physical Society of Japan 77
ページ: 123714/1-4
固体物理 43
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http://www.phys.keio.ac.jp/faculty/eto/eto.html