研究概要 |
本研究では青色一紫外発光材料として注目を集めている酸化亜鉛(ZnO)のナノ粒子における高密度励起下での多彩な状態変化に伴う発光特性の解明を目指して行われてきた。 今年度は研究の初年度にあたり,試料作製と評価,および,基本的な発光測定を中心に研究を遂行してきた。8〜90nmの範囲で異なる粒径をを有するZnOナノ粒子をアルカリ共ライド(KCl)結晶中にそれぞれ分散させ,石英板上に試料を作製した。試料は走査電子顕微鏡(SEM)・等を用いて観察・評価した。ZnOナノ粒子はプラズマ法を用いて高温下で作製された市販品を用いた。ナノ粒子は形状は多角形を有し,粒径が比較的よく揃った良質の単結晶である。低温下での弱励起フォトルミネッセンス測定においては,ZnOナノ粒子から明瞭なバンド端発光(自由・束縛励起子発光)-が観測される。一方,励起光の強度を増加させると,非線形的に強度が増大する励起子分子発光が出現し,さらに増加させると,励起子-励起子散乱による発光(P発光)が観測されるようになる.ここでP発光の出現する励起光の強度は粒径のサイズによって異なり,粒径が小さくなるにつれて,より大きな励起光強度が必要であることがわかった。この結果は励起子-励起子散乱が粒径に大きく依存し,粒径が小さくなると散乱が起こりにくくなることを示唆するものである.またこの試料においては室温でP発光に関連したレーザー発振を実現した.今後は粒径の異なる様々な試料に対して同様な測定を行うことで。ナノ粒子における高密度励起状態の振る舞いについて多くの知見が得られるものと考えられる。 最近,金属表面の上にZnOナノ粒子をのせるとバンド端発光が増強する現象を見出した。目下,この試料に対して高密度励起下での発光測定を進めており,増強された発光を用いてレーザー発振が実現できるものと期待している。
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