研究課題/領域番号 |
19540349
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
河裾 厚男 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究主幹 (20354946)
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研究分担者 |
深谷 有喜 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究員 (40370465)
橋本 美絵 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 博士研究員
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キーワード | 陽電子 / 全反射 / 回折 / 表面 / 電子励起 / 表面プラズモン |
研究概要 |
本研究課題では、エネルギー分析型反射高速陽電子回折(RHEPD)装置を完成させ、各種の表面超構造のエネルギー損失スペクトルから得られる電子励起過程を解明し、これより表面電子状態に関する知見を得る。平成20年度には、前年度に製作した装置を使用して、Si(111)-7×7、Al(111)表面、Bi(001)表面、及び、Ag(111)表面に付随する全反射陽電子のエネルギー損失スペクトルを測定した。Si(111)-7×7表面とAl(111)表面については、プラズモンの平均励起回数が約3回と求まり、電子の場合と比較して、2〜3倍の数の表面プラズモンが励起されることが明らかになった。これは、全反射陽電子が表面平行方向にチャンネルするため、実効的に表面電子との相互作用が強められることに起因している。理想的な階段ポテンシャルを仮定すると、全反射強度は100%となるが、実際に観測された値は50〜80%程度に低減していた。また、鏡面反射スポットの強度分布が、有限の拡がりを示すことが見出された。動力学回折理論に基づいて全反射陽電子強度を計算した結果、これらが、陽電子によるプラズモンの多重励起を考慮することで説明できることが分かった。一方、Bi(001)表面とAg(111)表面では、表面プラズモンに加えて、内殻準位間の励起に起因する複数のピークが重なることが明らかになった。特に、Ag(111)表面の場合には、元々表面プラズモンエネルギーが低いため、その励起スペクトルを明瞭に観測することは困難であった。Bi(001)表面の場合は、観測された電子励起スペクトルを数学的に処理することで、表面プラズモンピークを定量できることが明らかになった。
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