研究概要 |
構造不規則型希土類合金における強相関電子物性を明らかにするため、高速4極直流スパッタリング法を用いて、非晶質CeM合金,M=Mn, Y, Ruを作製し、X線回折装置を用いて非晶質合金CeMの不規則構造を特有のハローパターンにより確認した。 続いて、作製された試料の熱膨張、磁化率、比熱、電気抵抗の温度依存性を、それぞれ精度良く測定した。その結果、非晶質CeMn, CeRuにおいてCe濃度とともに電子比熱係数が増大し、電気抵抗の対数依存性および抵抗極大が観測され、Ce高濃度側では低温極限でT^2依存性が観測されるとともにKadowaki-Woods則が成り立つことが示された。これらの結果は、Ceの4f電子が近藤効果を起こしCe高濃度側では重い電子を形成することを示すもので、非ブロッホ系においても重い電子状態が発生することを、ほとんど世界で初めて明らかにした。一方、CeMnのMn高濃度側では、Mn濃度に応じて巨大な熱膨張係数が発生することが明らかになった。これは、Mnの3d電子が熱弾性に大きく関与することを示すものである。また、Ru高濃度側では電子比熱係数が急速に減少し、Ru>60%では超伝導が発生し、Ru濃度とともに超伝導転移温度が上昇し最高温度3.5Kを示した。 琉球大学理学部NMR研究室の協力を仰ぎ、作製されたCeMn試料の^<55>Mn-NMR実験が行われた。その結果、NMRの共鳴線幅が磁化率に比例することが観測され、ミクロな視点から初めて、構造不規則系におけるCe4f電子の特異な磁気的状態が明らかにされた。
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