研究概要 |
希土類化合物の物性を担うf電子軌道の状態は強く結晶格子と結合し、素励起状態が電子-格手相互作用によって決定される場合がある。特に、隣接した希土類イオンとプニクトゲンイオンの間に働くp-f混成など顕著な相互作用が働く場合での電子系と格子の動的構造を明らかにすることを本研究は目指している。H19年度において以下の成果を得た。 ・CeSbとCeBiにおいてp-f混成によってもたらされるf電子軌道秩序と格子変調が重畳する秩序相でのみ観測された励起を、隣接したCeとSb,Bi間での延伸振動モード(x^2-y^2対称性を持つ)がf電子の磁気的励起と結合していることによる束縛モードであると解釈する理論的なモデルを得た。 ・充填スクッテルダイトPrOs_4Sb_<12>,PrRu_4Sb_<12>およびCeOs_4Sb_<12>の中性子散乱実験により、Sbのカゴ状格子中での希土類イオンが極めて低エネルギーの光学フォノンを形成すること、さらに低温でエネルギーが低下する強い非調和性がSbを含む充填スクッテルダイトでは共通することを見出した。フォノン-電子間あるいはフォノン-フォノン間相互作用が支配的であると考えられる。 ・硼素のネットワーク構造を持つGdB_6における磁気秩序は結晶構造相転移を伴うことが知られていた。その構造の周期に対応する波長のフォノンのエネルギーが、他のRB_6に比べて極めて低いことを非弾性X線散乱実験により見出した。磁気秩序をもたらすRKKY相互作用を担う構造が格子不安定性に関わると考えられ、希土類物質での電子-格子相互作用の現象を新たに発見した。
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