研究概要 |
希土類化合物の物性を担うf電子軌道の状態は強く結晶格子と結合するため、電子-格子相互作用によって支配されるダイナミクスや相転移が出現する場合がある。特に、物質内で隣接した希土類イオンとプニクトゲンイオンの間に働くp-f混成に見られる強い相互作用が働く場合での電子状態および格子の動的構造を明らかにすることを目指し、H20年度において以下の成果を得た。 これまで実験的に調べてきた充填スクッテルダイトPrOs_4Sb_<12>, PrRu_4Sb_<12>およびCeOs_4Sb_<12>の低エネルギーフォノンに加えて、CeRu_4Sb_<12>の中性子散乱実験を実施した。その結果、全ての物質で共通して、Sbのカゴ状格子中での希土類イオンが極めて低エネルギー(3〜5meV)の光学的フォノンモードを形成すること、さらに低温でそのエネルギーが低下することも共通して現れ、強い非調和性が現れることを確認した。波数ベクトルQ=(6 -0.4 -0.4)近傍でのモードを観測した場合、PrOs_4Sb_<12>でのフォノンエネルギーの低下率が他に比べて大きいことを見出した(2008年9月の物理学会で報告)。 p-f混成効果による4f電子の状態変化にも着目し、PrOs_4P_<12>を中性子非弾性散乱によって測定し、結晶場準位のエネルギー位置と幅の温度依存性を得た。30K程度以下でエネルギー位置の1 meV程度のシフトが起きること、基底状態から異なる三重項励起した場合に準位幅が異なることを見いだした。これらは局在f電子と伝導電子間の交換相互作用による混成によりもたらされる効果であると論じた理論の枠組みの中で定量的に理解できることを指摘した(2009年3月の物理学会で報告)。
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