研究課題
銅酸化物高温超伝導体でその存在が明らかになりつつあるスピン密度変調(SDM)と電荷密度変調(CDM)について、その一般性と超伝導発現に本質的であることの実験的な証拠の積み上げを目指している。平成19年度は、SDMとCDMとが共存している可能性が最も高いLa214系高温超伝導を取り上げ、超伝導を担うホールの挙動に着目した中性子散乱実験とX線吸収微細構造(XAFS)分光実験を勢力的に行った。これまで磁性不純物と盲目的に考えられてきたNi置換が必ずしもそうではなく、Ni置換量に比べてホール濃度が比較的高い場合には、ホールを周りの酸素軌道に捕獲することで実効的にはスピン1/2となり、構造的にはCu02面の乱し方が小さく、結果、超伝導を強く破壊しないというシナリオを得ることができた。つまり、Cu02面における電荷・スピン・軌道・格子の絡み合いを、実験的に鮮明にした。上記La214系の実験と平行し、平成19年度には、別の高温超伝導体Bi2201系を扱う研究もスタートした。狙いは、SDMとCDMの一般性を示すことである。スピンダイナミックスを調査するための中性子非弾性散乱実験を視野に入れ,まずは大型単結晶作成に取り組んだ。その際、Pb置換することで容易に大型化し、磁性不純物(本研究ではFe)を置換することで磁気的シグナルを出し易くする工夫を行った。結果、中性子散乱実験には十分な体積となる数cmサイズの単結晶育成に成功した。X線粉末回折、ICP化学分析、磁化率測定、電気抵抗測定、単結晶中性子回折等の予備測定を終え、元の結晶構造を保ったままFe不純物が確かにドープされ、種々の物性にFe置換効果が顕著に現れていることを見出した。
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J. Phys. Soc. Jpn. 76
ページ: 074703-1-6
ページ: 114715-1-8