研究課題/領域番号 |
19540359
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小山 富男 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30153696)
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研究分担者 |
加藤 勝 大阪府立大学, 工学研究科, 准教授 (90204495)
町田 昌彦 東北大学, 日本原子力研究開発機構・計算科学技術センター, 研究主幹 (60360434)
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キーワード | 巨視的量子効果 / 固有ジョセフソン接合 / 高温超伝導体 |
研究概要 |
銅酸化物超伝導体等の固有ジョセフソン多重接合系の低温領域で観測される巨視的量子トンネル効果(MQT)における多重接合効果を理論的に考察した。本年度は、接合間にキャパシティブ結合が存在する場合を考察した。キャパシティブ結合は、超伝導層の帯電効果に起因する静電相互作用に起源を持つ。ジョセフソン接合系のMQTは、バイアス電流下で0電圧状態から有限電圧状態へスイッチングする場合の臨界電流値の分布に現れる。実験的には、第1ブランチへのスイッチング(ファーストスイッチング)と一様ブランチへのスイッチング(ユニバーサルスイッチング)で、脱出確率の顕著な増大が観測されている。本研究では、ファーストスイッチングの場合、スイッチングしない接合の位相差は、トレースアウトされ質量に繰り込めることを証明した。この場合、繰り込まれた質量は軽くなる。このため、スイッチングする自由度に対する量子効果は増大し、脱出確率の顕著な増大が引き起こされる。脱出確率に対する我々の計算値は、実験値とよい一致を示した。Bi-2212固有ジョセフソン接合系のユニバーサルスイッチングでは、接合数の2乗に比例する巨大な脱出確率が観測されている。本研究では、接合間の結合が比較的弱い系の場合、スイッチングがすべての接合で同時に起きるのではなく、一定のタイムラグを持ち連鎖反応的に生じると接合数の2乗に比例する脱出確率が得られることを示した。この結果は、Bi-2212系固有ジョセフソン接合に対する実験結果を定性的に説明するものである。
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