研究課題/領域番号 |
19540361
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
野村 竜司 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (00323783)
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研究分担者 |
奥田 雄一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50135670)
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キーワード | 超流動ヘリウム3 / P波超流動 / アンドレーエフ束縛状態 / 表面状態密度 / 横波音響インピーダンス / 異方的超流動 / 対破壊 / 鏡面散乱 |
研究概要 |
我々が見出した横波超音波法によって、壁近傍に出現するP波超流動ヘリウム3の表面アンドレーエフ束縛状態の分光的研究を進めた。拡散的散乱極限の表面状態密度には、超流動ギャップエネルギー内に束縛状態バンドが現れ、そのバンドの端が非常にシャープであることを明らかにしてきた。今年度は表面状態密度の境界条件依存性を調べるため、壁をヘリウム4薄膜でコートした実験を行った。常流動状態のヘリウム3において横波音響インピーダンスの測定を行い、コートによって変化した鏡面度の値を求めることに成功した。超流動B相においてコートの影響はインピーダンス変化量の減少と準粒子対励起に起因する特異温度の上昇として表れた。鏡面散乱した準粒子は壁に平行な運動量を保存するため変化量が減少したと考えられる。一方、高温へのシフトは状態密度の変化を意味する。コートによって変化するのは表面状態のみで、バルクの状態密度は全く影響を受けない。温度依存性のシフトはインピーダンス測定が表面状態の変化を捉えていることの更なる証拠と言える。理論によると鏡面度が増すとバンド幅が広がることが予測されており、我々の測定と符合する。コート量と圧力を系統的に変えた測定から、束縛状態のバンド幅の鏡面度依存性を始めて決定することが出来た。多くの異方的超伝導体と異なり、ヘリウム3では表面状態の研究を行う上で基礎となるバルク状態の対称性が良く分かっているという利点がある。また複数の超流動相の存在、境界条件の制御可能性、磁場によるスピン常磁性効果など、超伝導体では難しい多様な条件下での表面状態の物理を系統的に調べる道が開けたと思われる
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